こちらは「東京アプリ原告団メンバーの主張を伝えるページです。

   東京アプリ生活応援事業と018サポート事業

1、018サポート事業について

 東京アプリとは直接の関係はないのですが、東京都が行っている018サポートという子育て支援事業(一度申請すれば、ひとりにつき1か月毎に5,000円が支給される。(支払は4か月分をまとめて、年3回振り込む。詳しくは下部の一覧表参照)というものがあります。担当部局は福祉局育成支援課です。
 この件に関し分かりづらい点があったので、都のHPに載っている問合せ先に電話しました。しかし、ここは単なるコールセンターで、責任をもった回答をすることはなく(できず)、少し突っ込んで聞くと、「うけたまわったご意見は上にあげて共有するようにします」という、どこかで聞いたような応答。これはマニュアル化されているらしい。電話応答のトップに「この録音は応対品質の改善のため、録音させていただきます」という自動音声が流されるのもワンパターン。最近このテの応答が多いのもどうかと思います。話にならないので、直接担当者を出すよう求めましたが、「それは出来かねます」とのこと。思い余って福祉局の担当課に直接電話しました。
 聞きたかったのは、デジタル申請と郵送による受付のみで、なぜ窓口申請を準備していないのかということです。こちらも生活応援事業と同じで、デジタル申請が中心。例外的に郵送での申請を認めています。
 「都の窓口申請」と聞くと、都庁まで出かける方がたいへんではないか、と思われる方もいるかもしれませんが、実際には、居住する市区町村の役所の福祉担当部署で受け付けるのです。これは「法定受託事務」と呼ばれるものです(地方自治法第2条9項2号、「第二号法定受託事務」と呼ばれるもので、国からのものは「第一号法定受託事務」と呼ばれます)。身体障害者手帳等の交付、各種手当の手続きなどですが、きめ細かで適切な対応ができるということと、実態把握の簡便性、対象者の利便性から地元の役所の窓口で申請を受付ける形になっているのでしょう。
 018サポート事業は東京アプリ生活応援事業とは異なり、ポイント付与でないところはまだ評価できます(というか、これが当たり前)。ただし、窓口申請を受け付けておらず、片手落ちと言わねばなりません。都庁全体でデジタル化を推進しているということが背景にあり、これが影響して「デジタル申請中心主義」になっているのでしょう。
 しかし、例えば単身の全盲の視覚障害者や知的障害者はどうするのでしょう。18歳までの人でも一人で暮らしている人もいるはずです。福祉事業であるならば、そのような人たちも漏らさずすくい上げられるような方策が必要です。そのためには窓口申請が一番確実であり、直接言葉を交わすことで、市区町村の担当者も当事者の置かれている現実に触れられる可能性が生まれるのです。社会福祉とは当事者の現状を理解するところから始まるのです。その意味で、最低でも、デジタル申請や郵送による申請が困難な人たちのフォローは必要です。
 なぜ窓口申請を受け付けないのかという質問に対して、福祉局の「子ども・子育て支援部」育成支援課の職員は200万人もの人が対象となり窓口申請をすると大混雑になるからと答えていました。しかし、これは理由にはなりません。窓口申請だけにせよと言っているわけではありません。デジタル申請や郵送による申請手続きを同時に行えば、そんなに混雑することはあり得ません。それにこの事業は今年度限りのものなのです。一時的に窓口の担当を増やすことも可能です。
 「けなしておいて持ち上げる」ように聞こえるかもしれませんが、それでもまだ、生活応援事業と比べれば、018サポート事業はマシなほうです。018サポートはデジタル申請のみではないことと、支給が現金(振込)であるからです。
【生活応援事業と018サポート】
 
所管 目的 対象・期間 支給内容 手続 備考
生活応援事業 デジタルサービス局 @東京アプリの更なる普及促進を図る
A昨今の物価高騰など社会情勢の変化を踏まえて都民の生活をより一層応援する
@マイナンバーカードを持っている15歳以上で都内在住の人
A東京都に住民登録している人
【実施期間】
2026年2月2日(月)13時00分か〜2027年4月1日(木)
東京ポイント(11,000ポイント)付与 @NFC(非接触型読み取り機能)対応スマートフォンで東京アプリをダウンロード
Aマイナカードと電子証明書の暗証番号(カード発行時に設定する4桁の番号)
※デジタル手続きだけで、他の申請方法はない。
※「申請手続」ができることが「条件」のひとつともなっている。
018サポート 福祉局育成支援課 学びなど子どもの育ちを切れ目なくサポートし、「子育てのしやすい東京」を実現する 0歳〜18歳
【申請期間】
現在事業実施中であり、申請最終期限は2027年3月1日
1人5,000円/1ヶ月毎
(年3回、4か月毎に振込)
@マイナポータル(行政手続のオンライン窓口)でマイナカードを使って申請
A郵便での申請
※窓口申請はない。
※一度申請すればあとは自動的に支給(振込)される

2、東京アプリ生活応援事業の不備を018サポートで尻ぬぐい?
 東京アプリ生活応援事業はデジタル申請(マイナカード必須)のみであり、スマホやマイナカードを持たない人、持っていても使いこなせない人は、実質的に対象外とされます。しかも15歳未満の人は対象になりません。都内に住民登録をしていない人も同じです。こんな偏った公共事業があるでしょうか。
 15歳未満の人たちであろうと物価高の影響を受けるのは同じであり、そのような人たちを保護し、育てている家庭にこそ、物価高騰による「風圧」はより吹きつけます。また、家庭内DVや借金苦、民族差別など、様々な理由から住民登録できない人たちもおり、そのような人たちも物価高騰の強風にさらされます。
 生活応援事業の目的のひとつに「昨今の物価高騰など社会情勢の変化を踏まえて都民の生活をより一層応援する」がある以上、これらの人たちを切り捨てることは、紛れもない制度的欠陥です。このような欠陥がまかり通っているのは、もう一つの目的「東京アプリの普及促進」が、生活支援という目的を凌駕してしまっているからです。このような構造は、先述した018サポート事業でも見られますが、生活応援事業はポイント付与やデジタル手続き偏重で、とても公共事業とは呼べないものになっているのです。
 ではなぜこのようなことになってしまったのか。それは、生活応援事業という社会保障性の強い事業を、デジタルサービス局という畑違いの部署が所管していることが原因だと考えられます。本来であれば、このような事業は福祉局が受け持つべき事業です。福祉局の方が社会保障事業の実績もあり、より適正な事業システムを構築することができるはずです。福祉局の所管であれば、ポイント付与などという不適当な支給方法を採用しなかったかもしれないのです。しかし、行政のデジタル化推進を主要任務とするデジタルサービス局がこの事業を担うことで、社会保障事業である「生活応援」を、行政のデジタル化推進のために利用してしまった、ともいえるのです。
 しかし、このような見方も「善良」であり過ぎるかもしれません。デジタルサービス局の思惑は、次のようなところにあるとする方が、よりリアルに感じられます。すなわち、東京アプリの普及促進(行政のデジタル化)のためにポイント付与という「甘言」を用意し、その理由付けとして生活応援という名目を付けた。つまり、着想の順番が逆だったのではないでしょうか。これは生活応援ではなく、実態的にはたんなるエサの「ばらまき」です。これに生活に困っている人も、そうでない人も飛びついた。マイナカードの普及策で国がやった、「今なら最大2万ポイント」のリメーク版です。
 東京アプリやマイナカードが本当に便利で必要なものなら、ポイントなど付けなくても、都民や国民は、すすんでそれを利用するでしょう。逆に言えば、ポイントを付与しなければ広がらないことが、東京アプリやマイナカードの不評を示していると言っても過言ではありません。
 その宣伝やポイント付与に莫大な予算を使い、エサで釣って当局の思惑を達成しようとする。広報にもエサ代にも莫大な経費が必要です。これは都民を巻き添えにした、まさに大いなる愚策です。
 開店記念の特売セールのようなものです。「特売セール」なら、誰が行っても現金さえあれば特売品を買うことができます。しかし、生活応援事業では15歳未満の人を生活応援事業の対象としていません。15歳未満の人は018サポートで支援しているからとか、スマホとマイナカードを使いこなすことは困難だとかを理由にしていました。本気で生活支援をしようと考えるなら、誰でも等しく申請できる方法(窓口申請・現金給付)すればよかったのです。もっと言えば、所管を福祉局にすればよかったのです。しかし、ポイント付与で東京アプリを普及したいデジタルサービス局(=小池百合子知事)は、窓口申請や現金給付、生活応援事業の所管を福祉局にする気など、はなからない。
 15歳未満の人たちは018サポート事業による支援を受けているから生活支援事業の対象としない、という都の理屈もおかしなものです。生活応援事業と018サポート事業のねらいは異なります。前者は物価高対策としての生活応援、後者は育成支援。これをカネという別の物差しで比較して、等価だということ自体に無理があります。しかも15歳から18歳までの人は生活応援事業も018サポート事業も受けられるのです。屁理屈というしかありません。
 このような指摘もあったからでしょうか、4月の都議会での追及を受けて、018サポート発足当初にはなかった加算がなされるようになりました。それが、018サポートを受けている0歳から14歳までの人に、1回だけ11,000円を支給するという措置です。名称は「子育て応援+(プラス)」、支給の理由も目的も示されていません。誰がどう見ても、生活応援事業のポイント付与と重なります。
 デジタルサービス局で行った生活応援事業の欠陥を、福祉局の所管である018サポート事業で「尻ぬぐい」するというような、異常な事態です。先にも述べたように2つの事業目的は異なるのに、カネという物差しで強引に決着を付けたとみられる。これも屁理屈です。こんなデタラメを都議会では追求しないのでしょうか。

3、東京アプリ生活応援事業は違法である
 スマホもマイナカードも、全ての都民が持っているわけではなく、持つことが義務でもありません。そのようなものを持たなければ申請できない公的支援事業などあり得ません。対象者には、誰にでも等しくその機会が与えられなければならないのです。このような都の施策は、法の下の平等(憲法第14条)や自治体の行政サービスを平等に受ける権利(地方自治法第10条2項)に反し、基本的人権の侵害(憲法第11条)といえます。
 都の生活応援事業も018サポート事業も、窓口申請、現金支給を原則にせよ。こんな単純なことを、しかもこれまで通りの申請方法を、なぜ採用しないのか、理解に苦しみます。窓口申請・現金支給というシステムを設けたうえで、それでもアプリやポイント利用が便利だと思う人はそちらを利用すればいいのです。
 窓口申請、現金給付という仕組みをあえて用意せず、これを利用できない多くの人たちを置き去りにしているのです。そこまでして、行政手続きのデジタル化を優先させる必要があるでしょうか。わたしたちが都を被告として損害賠償請求訴訟を起こす根拠はここにあります。
(榎本)












 
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