これ以降のデータは「山をわたる風 A」をご覧ください。 | |
多摩森林科学園 「多摩森林科 学園」なのか、「多摩森林 科学園」なのか迷うところだろう。もちろん後者だ。ここは学園ではない。 いっぽう「街をわたる風」に載せるか、「山を…」に載せるか迷いもした。 前からいちど来てみたいとは思っていた。様々な種類の桜が植えられている。JR高尾駅から10分ほどの八王子市廿里町(「とどりまち」と読む)にある。山間の地形をそのまま利用した7ヘクタールの樹木園に約600種の樹木が植えられている。この時期は特に桜の花をめあてに大勢の人が訪れる。 ここに来る前に、ほぼ平坦な小下沢林道を歩いたせいか、けっこうな斜度を持った坂道に、壊れた心臓は悲鳴を上げた。まさに山歩きだ。「山をわたる風」で大正解。 天気もよく。青空に桜の花が映えていた。きつい登りのおかげで、都心方面もくっきり見えていた。 桜の花をめでに来たのだけれど、その種類についてはほとんど覚えていない。息が苦しかったためではなく、名前よりも色彩に目を奪われていたからに他ならない。 (2017.4.7) |
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木下沢梅林2017 昨年に引き続き、今年も木下沢梅林(※@)に出かけてみた。昨年と違うのは友人同伴だったこと、初めから山に登る気がなかったことだ。今年の目的は、梅と野草の花見と、可能ならカワセミの観察だ。結論からいえば、あとの二つは空振りだった。 1週間前、中央高速から眺めた梅林の開花状況がよさそうだったことから、その気になった。だが、実態は少し違っていた。高速道路上からだと、梅林の上っ面しか見られない。しかし、梅の花見は、一般的に下から仰ぎ見る格好になる。当然上のほうは日当たりが良く、開花も進んでいる。だが、下のほうの枝や、日陰になりやすいところではその限りではない。とはいっても、遠景でとらえるぶんには遜色はないのだが……。 いつものビュースポイントには、三脚に取り付けた一眼レフカメラの放列が並ぶ。まだ駐車場も開いてないので、路肩駐車する車でいっぱいだ。今年の「高尾梅郷梅まつり」は3月11日からだからだし、開場時間も10時からだからしかたない。 ぼくも友人もコンパクトカメラだが、一眼レフ軍団に交じってシャッターを切る(写真@)。遠景ばかりでなく、梅の花の接写も試みる。日当たりのいいところは、それなりに暖かい。その温かさによって生じた朝霧が、梅林の上を流れていく。陽はだいぶ上がってしまったので、幻想的な光景にはならないが、それはそれで趣のある風情だ。 小一時間も撮影タイムに費やし、小下沢林道を遡ることにする。小下沢は杉林に囲まれたところが多く、日が差し込んでいるところが少ない。8時近いとはいえ、日陰はかなり冷え込んでいる。手袋を取り出し装着する。林道の道端に目を走らすが、花が咲く雰囲気すらない。時々椿の赤い花が落ちている程度だ。小下沢に下りてみるも、ハナネコノメの「ハ」の字もない。 景信山への登山口がある小下沢キャンプ場まで歩いたが、収穫はゼロ。それでも諦めきれず、登山道がある枝沢に足を踏み込んでみたが、花がないのは同じだった。 キャンプ場で紅茶タイム。暖かい紅茶が体内に入ると幸せな気分になる。2人で夜見山話をしたのち、やって来た林道を引き返す。途中でカメラを抱えたひと、数人とすれ違う。聞くと、ミソサザイを狙っているのだとのこと。そのミソサザイは、木下沢梅林近くまで戻った場所で姿を見かけ、さえずりを聞いた。ただし、カメラには収められなかった。カメラにとらえたのはエナガ(写真A)。すぐに名前が浮かんだのは、先日のバードウォッチングが少しは役だったのかもしれない。 ※@このあたりの沢の名前は「小下沢」だが、梅林については八王子の公式HPで「木下沢梅林」となっているので、それに従った。このことは、当ページの「木下沢梅林」(2016.3.17)にも記した。 (2017.3.3) |
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バードウォッチング バードウォッチングなどと構えなくても、山に出かけていたころは、野鳥との接触に事欠かなかった。ただし、その多くは声のみの遭遇に限られていたと言っていい。言ってみれば、「バードリッスン」か。なかでもコマドリのさえずりは耳に残っている。あの馬のいななきに似た声を聞くと、心が洗われるようで、「高山に来たんだなあ」という感慨があったものだ。 ほとんどは声だけだったが、時には野鳥を偶然見かけたこともある。印象深いのはオオルリ。この世の物とは思われない青い(瑠璃色というべきなのか…)姿を森の中で見かけたことがある。あまりの意外さから、即座には現実感がわかなかった。事実が意識に定着するまで時間がかかったということかもしれない。もちろん写真など撮れなかった。 奥多摩の七つ石山の近くでキバシリという野鳥に出くわしたときは、カメラのレンズにうまく収まってくれた。木の幹を下向きになって素早く走り回っている姿は、鳥というよりは虫をイメージさせた。夏山ではイワヒバリやホシガラスをよく見かけた。高山の岩場という見通しの良いところにいるので、被写体としてとらえやすかった。 いずれの鳥たちも、登山道をたどりながら、偶然出くわしたものだ。狙いすましてカメラを構えたり、鳥を求めて歩き回った記憶はない。 山を歩くことが難しくなった今になって、改めて野鳥を観察・撮影する機会を得た。 市立郷土博物館が主催する自然観察会としての「バードウォッチング」の募集が、市報に載っていた。双眼鏡と筆記用具を用意するようにとある。双眼鏡は天体観測用に買った、しかし天体観測は挫折し、ほとんど使わないまま部屋で眠っているやつがある。カメラとは書いてないが、山で使うつもりで購入した倍率の高いカメラもある。カメラと双眼鏡をぶら下げて、山をさっそうと(?)歩く自分の姿が思い浮かぶ。カメラくんと双眼鏡くんも、きっと喜ぶだろうと思い、さっそく申し込む。 集合場所は市の郷土博物館。勇んでいたわりに集合時間に遅れてしまう。すでに説明は終わりかけていた。みんなの後について出発。博物館の裏手が狭山丘陵の南の端、「狭山緑地」になっている。はじめのうちはなかなか鳥の姿が見られない。小鳥の声は絶えずしている。「あれは、ヤマガラ、モズ、エナガ」とよく解かっている人たちは判定している。こちらがわかるのは「ツツピー」というシジュウカラの鳴き声(注@)のみ。 鳥の声を聴きながら、彼方に視点を移すと、丹沢山系や雪を白くまとった富士山が望める。一瞬、心は山岳展望になっている。我に返って近くの小枝を注視すると、エナガの姿が双眼鏡に飛び込んでくる。あわててカメラを取り出すも、エナガはすでに別の枝に飛び去っていた。 ゆるい登りをぞろぞろと移動する。近くの神社の境内。神社の経営している幼稚園もあるが、今日はお休み。近くの梅の木にメジロがいるらしいが、ぼくの目には捉えられない。突然甲高い鳴き声。それに合わせるように、近くから同じような「声」が上がる。なんとスタッフの一人が指笛で鳴らしたアオゲラの「鳴きかわし」。「あそこ、その木の上のほうの木の又にアオゲラがいる」と教えてくれる。彼方の枝の間に緑色をした塊が見える。時々頭を動かしている。なかなか飛び立とうとはしない。シャッターチャンスだ。そしてゲットしたのがこのピンボケ写真(写真@) さらに丘を登る。このあたりから本格的な丘陵コースとなるが、鳥を探しながらだから、ゆっくりペース。ぼくの体調にもちょうどいい。落葉広葉樹の林が、暖かくぼくらを包んでくれている。 誰かが「あっ、いるいる!」と叫ぶ。木の幹や枝先ではなく、やぶのあたりを眺めている。「シロハラです」と講師が説明する。やぶに紛れて見分けがつきにくいが、よく見ると、チョコチョコと走り回り、時々止まって地面をつついている鳥がいる。双眼鏡を構えてその姿を確認する。シロというのだから、当然「アカハラ」というのもいるのだろう。そういえば聞いたような、アカのほうが耳慣れている気もする。カメラを構えてバシバシと撮る。ピントよりも、構図よりも、とにかくカメラに収めることが先決だ。「数撃ゃ当たる」の極意だ(写真A)。 このあたりから、次々に鳥が姿を現し始めた。近くの木の幹にエナガ(写真B)が走り回っている。苔を採取して巣の材料にするそうだ。もっと上のほうにはコゲラ(写真C)がいた。すべては講師やスタッフの指し示しによる。 「おっ、ルリビタキだ」「本日一番の収穫!」との声が上がる。少し離れた横に伸びた小枝の先に、白い腹の、よく見ると背中が青い小鳥がとまっている。あまり動かない。背景(くずおれた人家)がよろしくないが、それでもシャッターチャンスだ。もう双眼鏡を構えている暇などない。とりあえずシャッターを押し続ける(写真D)。最初のご指摘通り、これが今日一番の収穫になった。 注@:一般的には「ツツピー」はヤマガラ、「ツッピー」はシジュウカラと言われている。 山に通い詰めていた時でさえ、めったに出会わなかった野鳥。しかし、こんな身近な林の中にもけっこう様々な種類の鳥がいるものだ。もちろん、講師やスタッフの指導のもとに見られたものではあるけれど、じっと目を凝らし、観察していれば、たくさんの野鳥に出会える。そのことに改めて感動した。 最後に、近くの広場で今日のまとめと、講師への質問、今後のイベントの案内があった。当たり前のことだろうが、講師スタッフ共に野鳥のことには詳しい。野鳥それぞれの特徴、餌の種類、巣作り、子育てのことなど、何でも知っている。質問ではなかったが、ぼくはアオゲラの鳴きかわしをもう一度やってくれるようにお願いした。リクエストに応えてくれたスタッフの、「ピーッ」という鋭い音は、本物さながらに狭山緑地の林に響き渡った。 (2017.2.16) ※このデータを「街をわたる風」に載せようか、それとも「山をわたる風」に載せようかと迷った。位置的にはちょうど「街」と「山」の中間。それでも「山」にしたのは、これを載せなければ、これから先、「山」に載せるものが出てくるかどうか心配だったから。 |
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ばんびともんきー ロウバイを見るために、497.1mの宝登山に登る。「登る」と言ったって自分の足で一歩ずつ坂を上がるわけではない。そんなことはとうにあきらめている。今回お世話になったのはこのロープウエー。山麓駅から山頂駅まで「ばんび」(写真@)と「もんきー」という2台が往復してくれている。 この日付き合ってくれた同好の士によると、このロープウエー、かなりの年代物らしい。屋根や側面が何枚もの鉄板でできており、それをリベットでつないでいるという。確かに内部や外部にいくつもの鋲が打ってあり、小さな鉄板を貼り合わせたようになっている。現在では、屋根などは一枚の鉄板を型抜きして整形したものが使われているらしい。 内部の手すりや照明灯やスピーカーも年代物だ。同好の士が製造年を示すプレートを見にいった。昭和36年製造とあるらしい。1961年だ。東京オリンピックよりも更に以前に製造されたものだ。すでに55年以上の時を経ていることになる。ある意味貴重な乗り物だ。 スタイルは全体的に丸みを帯びていて、当時としてもモダンなものだったのだろう。現代でもそんなに見劣りのする形ではない。ヘリコプターの脚部についている「そり」ようなパイプも、発着時のガードの役割にもまして、全体のスタイルを引き締める効果もあるようだ。 2台のロープウエーは正面につけられた名前が違うだけで、その姿かたちは全く同じ、色も同じ黄色(※)。名前を見なければ自分が乗ってきたロープウエーが「ばんび」なのか「もんきー」なのかはわからない。そのどちらかわからないロープウエーで山頂に運ばれた。 山頂からは、尖った形の武甲山が秩父盆地の先に望める(写真A)。武甲山は、痛々しくもその北面が階段状に削られている。石灰石の掘削のためだ。蛇行して流れる荒川から立ち上る川霧が、秩父の街並みに漂っているのが見られた。 ロウバイ園を西に向かえば、両神山が屏風のように屹立しているのが見られる(写真B)。その姿は、武甲山に対する無残な仕打ちに、怒りをあらわにしているようにも思える。 武甲山と両神山。全く違う形状の二つの山が、ふっと、「ばんび」と「モンキー」に重なったように思えたのは、ぼくの錯覚か。 ※もともとは茶色と黄色(モンキーとバンビ)だったようだが、今ではどう見ても、どちらも黄色に見える。 (2017.1.26) |
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山の秋 湯ノ沢峠(山梨県甲州市)から少し歩くと見晴らしのいい草原に出る。ここは春・夏には様々な花々が見られるが、さすがに10月も半ばを過ぎると花は姿を消す。 その代わり、澄んだ空気のおかげで遠くの山々の見晴らしがよくなる。近くの山も例外ではなく、最も近いピークである大倉高丸も、木々の一本一本に至るまで青空を背景にはっきりと見て取れる。 ところが今年は紅葉の色づきが悪いのか、葉が落ちるのが早いのか、赤や黄色の葉っぱよりむき出しの小枝が目立つ(写真@)。 地上はそんな具合だが、空だけは高く澄んだ秋の装いだ。見上げた空の手前にはズミ(酢実)が実をつけていた(写真A)。この実が赤く色づくのももう少しだろう。 (2016.10.16) |
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藻岩山(札幌市) 北海道で旧友たちと会う。札幌在住の友人が「どこに行きたい?」と問うので、「山、できればほとんど歩かずに山頂に到達できるところ。見晴らしがよければさらに良い。」と、すかさず答えた。その希望を酌んでくれた場所がここ、藻岩山。山頂近くまで車で行き、「もーりすカー」というケーブルで山頂まで運んでくれる。まさにドンピシャの山。 北海道到着から、台風の影響でずっとぐづつき模様だった天候も、この日は朝から快晴。友人の人徳のなせる業か。 写真Aは藻岩山(531m)の展望台から景色。札幌の市街地をはじめ、遠く日本海の側の石狩湾まで見渡すことができる。その札幌市は大都会のわりに自然が豊かだ。藻岩山をはじめ、ジャンプ台で有名な大倉山、手稲山などがある。それらのすそ野は、いずれも住宅地に張り出した緑の根のようだ。 地元の人たちは季節を問わず登山や散策に出かけるのだという。そこでは四季折々のの花々や、野生の鳥獣が豊富に見られる。日本に限って言えば、こんなに自然の豊かな大都市をぼくは他に知らない。 写真@は旭日山記念公園から見た藻岩山だが、登山好きな人たちはここから藻岩山まで歩くのだという。ぼくももう少し元気だったら、そのコースをリクエストしたことだろう。ちなみにこの公園からの札幌の風景は、ビルや街路がはっきりと見えて、藻岩山からのそれとは異なった趣がある(トップページの写真)。 (2016.8.25) |
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ふたつの駒 駒ヶ根市(正確には中川村)の陣馬形山に向かう途中、中央高速道路八ヶ岳サービスエリアから眺めた木曽駒ヶ岳(写真@)。荒々しい岩峰がそびえ、「日本三大急登」のひとつに数えられる黒戸尾根と思われる稜線が左下に向かって延びている。駒ケ岳神社から黒戸尾根にとりつき、甲斐駒ケ岳を目指したのは何年前だったか。 陣馬形山から眺めた木曽駒ヶ岳はジオラマのようだったが、人里から見上げるそれは別の山のように神々しく感じられた(写真A)。人間世界の欲得や喜怒哀楽とは隔絶した存在、もしくは、人の営みを遥か彼方から見守ってくれている神に近きもののようだ。 ふたつの駒ケ岳。人を寄せ付けない厳しさと、包み込むような優しさを、ひとはその時々に感じ取って対峙する。 (2016.4.19) |
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石砂山無常・有情(相模原市緑区) 先達と2人で石砂山に登る。 神奈川県相模原市緑区(旧藤野町)にある石砂山は、東京では絶滅したと言われるギフチョウの飛ぶ山として有名だ。3月下旬から4月の上旬にかけて、暖かで風のない日中にはカメラマンやギフチョウ目当ての登山者で賑わう。かくいう我々もその末席に連なる者だ。 登山道に至る川筋には、超望遠の一眼レフカメラを構えた強者が勢揃い。すでに獲物(もちろん画像だが)を仕留めた者もいて、我々にもご開帳してくれる。 登山道に入るとさすがに人は減るが、次々と山頂から人が下りてくる(我々は事情で、出発が12時近くになっていた)。人々は口々にギフチョウの乱舞と人の多さを我々に伝えてくれる。これは脈アリと山頂を目指すが、次第に薄雲がかかり始め、ついには日差しも遮られてしまう。日差しの減少に比例して、期待も次第にしぼんでいく。 山頂に到達した時には、すでに人影もまばら。まばらな中に自分たちも含まれているのだから寂しい事この上ない。ましてギフチョウに対面することなど思いもよらない。 それでも、先達は執念で1頭のギフチョウとご対面したもよう。自分に関しては山中では1頭の例外を除いては対面できず、さきの川筋での撮影に成功したのみだった。 その例外の1頭が写真@。確かにギフチョウなのだが、どうも変だ。クシャクシャに固まって枯れ葉の上に転がっている。場所は登山道をそれた小高い平地だ。触角が微かに震えるような動きを見せているので、まだ死んではいないようだ。 先達によると、さきの高台でカメラを構えていた人がいたので、なんだろうと思って来てみたのだそうだ。おそらく羽化に失敗したのだろうとのこと。 衆人環視の中で優雅に舞う蝶(トップページの写真)もいれば、人の気づかぬこんなところで、小さな塊になって息絶えようとしている蝶もいる。それが自然なのだろうが、あまりにも対照的だ。 もうひとつ印象的だったのが、ヒオドシチョウ(写真A)。こちらは枯れ葉の上で休んでいるだけで、まだまだ充分に飛翔できる力を持っていそうだ。ただ、その翅の裾がボロボロに欠けている。 羽化したばかりのヒオドシチョウは、翅全体に広がる(名前の由来にもなっている)緋縅の鎧のような模様と、裾を縁取る青から黒の模様が特徴的だ。越冬によってすり切れたのだろうか。懸命に生きてきた様を思い浮かばせる。この蝶もいずれは死んでしまうのだろうが、存分に生き抜いた果てにある死は、無情とは対極にある。 蝶の無常と有情。ちょっとセンチメンタルな場面を感じた山行ではあった。 (2016.4.6) |
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木下沢梅林(東京都八王子市裏高尾町) ハナネコノメソウやカワセミを撮影するため、場合によっては景信山に登るため、柳小下沢林道を歩いた(景信山登山記は「山のページ」参照)。その道すがら木下沢梅林の撮影に望んだ。 梅林の開演時間は平日は10時のため、路上には多くの車が駐車しており、梅林を撮影するにふさわしいポイントにはたくさんのカメラマンがレンズを向けていた。 梅の花はわずかに見頃を過ぎていたようだが、遠景では気になるほどではない。 中央自動車道路の北側に広がる梅林は、ゆるい斜面に1400本もの紅白の梅の木が植えられている。斜面によってより立体的に梅の花が楽しめる。 ちょうどこの時は、朝日が南東から斜めに差し込んできているところだった。そのため紅白の花が陰影を伴ってくっきりと浮かび上がっていた。 これはシャッターを押す価値ありと、野次馬根性丸出しでカメラマンの群れの中に紛れ込む。そして撮影できた写真がこれ。歴戦の勇者のものには遠く及ばないが、思いの外よく撮れたと考えているのは自分だけか。 ※「こげさわばいりん」は、小下沢沿いにあることから「小下沢梅林」と表記するものとばかり思っていたが、八王子市のホームページを見ると「木下沢梅林」とある。ここではその表記に従った。 (2016.3.17) |
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遠望の山 柳沢峠に車を止めてハンゼの頭まで軽く歩いてみようという気になった。里ではしばらく雨が降っていないので、道路も走りやすいはずと楽観的な見通しを持ってでかけた。ところが、峠に近づくに連れて道端の雪の塊が多くなってくる。山の斜面も北側はほとんど真っ白。道路の中央の雪が踏み固められてアイスバーンになっているところも一部あった。 柳沢峠の駐車場まではなんとかたどり着いたものの、登山道は雪の中。踏み跡はあるが積雪はけっこう深い。こんな状況を出発前には予想すらしていなかった。 以前なら、多少の雪はかえって歩きやすいと勇んで踏み出したものだ。まるで子犬のように喜んで……。だが、今ではとてもそんな気は起きない。雪面の歩行でいたずらに消耗させれられ、途中で引き返すのが関の山。悪くすると遭難騒ぎ、というシナリオさえ頭に浮かぶ。 あっさりと計画は放棄し、甲府盆地に下ることにする。幸い南斜面にあたる塩山側の道路には雪はほとんど見られず、快適なドライブだ。 せっかくだから、南アルプスの山脈が見渡せるところを探して走り回る。広域農道のフルーツライン、勝沼IC寄りあたりに車を止める。足元は一面のぶどう畑だ。 ピーカンの青空は同じだが、日差しによって暖められた空気が盆地の中に淀んでいるのだろう、峠付近のピーンと張り詰めた冷たい空気とはやはり質感が違う。南アルプスの稜線がなんとなくぼやけているように感じられる。それでも聖岳・赤石岳から白峰三山・甲斐駒岳に至る山脈はすべて見渡せる(写真@)。 さらに車を走らせ、甲府市にある不老園に出かけてみる。 不老園は梅の季節だけ有料になる。休日ともあって狭い駐車場は満車。見学を終えた車が出るのと入れ違いに停めることができた。 梅はまだ三分咲きといったところか。紅梅のほうが開花が早いような気がする。 せっかくだから山を背景に画像を記録しようと、あちこちでカメラを構えてみた。悲しいかな撮影機材も技術もなく、なかなか思うようには取れない。コンデジのオート任せで数だけパチパチとやる。 Aの写真は南アルプスの前衛の山、鳳凰三山をバックにしたもの。 不老園の一角に、赤いずきんと襟巻きを着けたお地蔵さんか呆れ顔で佇んでいた(写真B)。 ―山から逃げ出してきたくせに、まぁーだ山の写真をとってるのかい?!―とバカにされているように感じたのは、自意識過剰の被害妄想か……。 (2016.2.11) |
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サルに襲われた 「襲われたと」書いたが、これはキャッチコピー。実際は「襲われそうになった」だけ。だけとは言っても、当人にとっては襲われたも同然の怖い思いをした。 河口湖畔のロープウエーでカチカチ山まで上り、そこから三ッ峠に至る尾根ルートをたどった(詳しくは「山のアルバム」参照)。 まずはカチカチ山で存分に富士の展望を楽しんだのち、天上山に登り、さらに三ッ峠方面を目指す。天上山を気分よく下っていくと15分ぐらいで林道をまたぐ(写真)。その直前で2頭の野生の猿に出くわした。あわててカメラを構える間もなく、サルは林道を越えて反対側の森に逃げ込んでいく。 カメラに収められなかったことを悔やみつつ、自分も林道を越えて反対側の登山道に踏み出す。そこは道がえぐれていて、周りの地面より1mほど低くなっている。 少しと行くと、さっきの(正確には、先ほどの同じような)サルが2頭、前方の地面で何か探しているようなしぐさをしている。またしてもシャッターチャンスを与えられた幸運をかみしめつつカメラを向ける。望遠で被写体を探したがなかなかつかまらない。 そのうち件のサルもこちらの存在に気づいたようで、1頭が逃げ出した。こちらもレンズを通してだとなかなか位置が確認できないので、裸眼でサルを探した。すると残りの1頭の目と自分の目が合ってしまった。 初めは何が起こっているのかわからなかった。今までの経験からするとサルが逃げて終わりになると高をくくっていたが、奴はじっとこちらを見つめ、いや「睨み」、口を日大きく開け、牙をむいている。視線が交わる位置が悪い。こちらは地面がえぐられた所だが、サルはこちらの視線の高さにいる。見下ろされている立位置だ。距離は10m位か。と、思った瞬間、キーッという声と共に襲いかかってきた。枝伝いにジャンプ力を活かしてこちらに直接向かってくる。まるで中空を飛んでくるようだ。牙をむき出しにしたその姿に、こちらはすでに戦意を喪失している。「やられる!」と覚悟を決めた瞬間、サルは手前5m位の木の枝に飛び乗り、いったん止まった。依然として牙をむき、こちらをにらみ続けている。「出方によっては跳びかかるぞ」という意志満々だ。 牙を立てられ、爪で引っかかれれば、こちらはひとたまりもない。まずいことに、当方は血液を固まりにくくする薬を飲んでいる。出血すれば最悪の事態になる。それに防御するほどの体力もない。血だらけになって横たわるおのれの姿が脳裏に浮かぶ。 こんな時には目をそらさないほうがいいのか、それとも目を合わせないほうがいいのか、はたしてどうだったろうと頭のなかでは悠長なことを考えていた。相手をいたずらに刺激すべきではないと判断し(というか、あまりの怖さに)目をそらし後ずさりする。少し下がって、相手が攻撃してこなそうだと思えたところで、ゆっくりと背中を向け来た道を引き返す。林道までの道のりをなんと長く感じたことか。 林道に出てから、今後とるべきルートを考えた。このまま進むのは正直言って怖い。引き返すのももったいない。林道を下吉田方面に下るのもかったるい。 いったん林道を下ったが、思い直して引き返した。サルに再び出くわした時のために、枯れ枝の太いやつを拾って手に持った。これを振り回したり、木立に打ち付けたりすればこちらの存在を知らしめるのに役立つだろう。希望的観測にすぎないが、少しはよりどころになる。 よほど緊張していたのだろう。ザックのポケットにはクマよけの鈴が入っていたのだ。それを取り出すことすら考えもしなかった。 かつて後立山連峰の一角でクマに出くわしたことがある。その時は、相手がブヒブヒなきながら谷筋に逃げて行ってくれたので事なきを得たが、今回は直接的な恐ろしさだった。人間が野生の領域に足を踏み入れているのだということを改めて思い知ったひとコマだった。 (2015.10.7) |
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オオムラサキ自然観察歩道 梅雨明けを思わせる晴天2日目、オオムラサキの飛翔を見ようとJR長坂駅から日野春駅まで歩く。「オオムラサキ自然観察歩道」と名付けられている10キロほどのコースだ。 釜無川やその支流の大深沢川が刻んでいる流域を歩くので、山道ではないにしろ平たんではない。距離ばかりでなく、今の自分には充分にきついルート。それでも、チョウの飛ぶさまを眺めるのが目的だから、ゆっくり歩けばいいので、その点は救いだ。 そのチョウ、オオムラサキは雌が1頭(チョウはこう数えるらしい。)見かけただけで、4時間も歩いた末、カメラに収めることはとうとうできなかった。 コースを間違えたあげく、出会った農作業中の地元の方のお話では、今年初めてオオムラサキ(雄)を見たとのこと(実は、その方が雄を見たあとにやってきた雌を目にすることができたのだった)。 帰りに立ち寄った、日野春のオオムラサキセンター(写真C)でお話を伺ったところ、今年は樹液の出が進んでないので、オオムラサキの出現も遅れているらしい。 トップに掲げた写真と写真Bは、その温室で撮ったもの。 話は前後するが、オオムラサキを見られなかった自然歩道についても少しふれておきたい。 北斗市明野町(旧明野村)は日照時間と八ヶ岳・甲斐駒の展望地として人気のあったところだが、長坂町のこの辺りもなかなか良い。明野は畑が多かったような気がするが、当地は川が近いせいか田圃が多い。八ヶ岳や甲斐駒(写真@・A)、富士山・茅ヶ岳も望める。のどかな山村の風景が味わえるおすすめのスポットだ。 (2015.7.11) |
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コリメート撮影 陣馬形山(長野県上伊那郡中川村)に登る(正確には「車で行く」かな?)。1445mの山頂にキャンプ場があって、山頂直下まで車で行ける。 当日は曇りがちの天気で見通しは良くなかったが、南アルプスと中央アルプスは望めた(写真@)。前回行った時の写真が「山のページ バックナンバー5」 http://yamabak.web.fc2.com/album-bak5/album-bak5.htm に載せてあるので、もしよろしければご参照ください。 Aの写真は月ではない。よく見ると雪渓を抱いた岩峰が写っているのが分かると思う。空気が澄んでいなかったので、かすんで見えるが……。 遊びで試したコリメート撮影(望遠鏡にカメラのレンズをあてて撮影すること)でねらった。撮影はうまくいったが、ねらった千畳敷は写っていなかった。千畳敷のように見えるのは、実は摺鉢窪カール。南駒ヶ岳と空木岳の間にある雪渓だ。 楽してうまくいくことは少ない。 (2015.5.28) |
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ピンクの競演 柳沢峠に車を停めて、鶏冠山に登る。山頂付近はピンクの花であふれていた。 鶏冠山からはミツバツツジ(三つ葉躑躅)の向こうに大菩薩嶺と富士山(写真@)。 北面の日当たりの悪い斜面には、イワカガミ(岩鏡 写真A)やシャクナゲ(石楠花 写真B)のピンクがあふれていた。 (2015.5.22) |
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マドンナに会いに 棒ノ折山の山頂に咲く満開のヤマザクラ(写真C)。僕はひそかにそれを山頂のマドンナと呼んでいる。 山に登れる体調でないことは一年ぐらい前から自覚している。それでも人の倍くらいの時間をかけてゆっくり歩けばいつしか頂上に到達できると信じて、痛い思いを忘れたころに山に出かけている。 この日(4.月25日)も歩き出してすぐに無理を承知で来たことを思い知る。 足元を見つめ、ゆっくりゆっくりと歩を進める。足元には季節の花スミレがそこここに咲いている。 たくさんの仲間がいるタチツボウミレ(写真@) 見逃してしまうほど小さなオカスミレ(写真A) 葉っぱにご注目、エイザンスミレ(写真B) マドンナに会うために、小さな乙女たちに心いやされながら登り続けた。 (2015.5.10) |
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